「ソバの花」というエッセイ。
書かれているのは、川魚、ソバ、山菜、茸。
典型的な山の幸です。
秋田の山間の小さな温泉宿を思い出しました。
「渓流の最深部、最後部までもぐりこむ」ところに棲む、イワナ。
「不毛地の産物」という、ソバ。
「もっともノーブルな味」と称する、山菜。
「深入りしすぎて谷へ転落したという話を聞くこともある」、茸。
そんななか、意外な食材が挙げられます。
ワラビとりの話、少し長いですが、引用します。
「これは聞けば聞くほど、たいへんな労働である。
さかりの短い植物だから一週間か十日ほどは夫婦二人で山ごもりして一日に何十キロというものをとってきては湯掻いて干さなければならない。
夜もおちおち眠れないのである。
一日に何十キロもとる、といっても、崖をよじのぼり、けもの道をつたいしての上り下りなのだから、とても人間業とは思えないような重労働である。
ろくな食事もできないのだが、かといって栄養をとらないとまっさきに眼が見えなくなってくるから、町で塩をたっぷりきかしたクジラの脂肪のかたまりを買ってくる。
それを縄でくくって小屋の屋根の天井からぶらさげる。
食事時になると鍋に味噌汁を作り、そのなかへドブンと脂肪を浸す。」
まさにその宿での食事でした。
秋田では、くじらかやき、というそうです。
塩くじらに、そこでは、ミズという山菜、じゃがいもが入っていました。
「山菜というやつは、やっぱり体を山まで運んでやらないと、本当にうまいものは食べられない。」
著者はそう書いています。
そんな宿でした。
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